ウェルビーイング思考

副腎疲労症候群からの回復と善き日常を目指す記録

副腎疲労症候群とトラウマ - 辛い身体症状の原因は抑圧された感情だった?

以前「副腎疲労症候群をどこで診てもらうべきか - 病院か民間療法か」に、「副腎疲労症候群は、専門病院や専門の整体院、漢方内科などに通うだけで本当に完治するのか?根本原因を探っていくと、やはり心理セラピーも必要なのでは」といった内容を書きました。この記事では、副腎疲労症候群の背景にあるトラウマや感情の抑圧といった心理面の問題について、私の経験を交え取り上げます。

副腎疲労症候群は心理面と密接に関わっている

副腎疲労症候群のバイブル「医者も知らないアドレナル・ファティーグ―疲労ストレスは撃退できる!」には、心理的ストレスとの関係について記述があります。

  • P.43 アドレナル・ファティーグは、ストレスが原因となって起こる。ストレスには継承から重度なものまであり、ストレスの種類には、身体的なもの、情緒的なもの、心理的なもの、環境に由来するもの、感染性のもの、あるいはこれらが組み合わさったものがある。
  • P.47 第4章 どんな人が患うのか? 十分な休息やくつろぎの時間を持たない人、人生を楽しまない人、常に自分を酷使している人、決して満足しない人や完璧主義な人、常にプレッシャーをかけられている人(特に、感情のはけ口がほとんどない場合)、逃げ場を失ったり無力さを感じている人、長期間に及ぶ困難に圧倒されている人、慢性の情緒的問題、重篤な外傷や再発を繰り返す病気をした人など

心理面の対処方法としては「(人や職場など)エネルギー泥棒を突き止めること」、「エネルギー泥棒に対して、状況を変えるか、状況に合わせて自分を変えるか、状況から離れるかの三つの対象方法があること」、内面のストレスを軽減させる方法としてNLPセラピーやリフレーミング、呼吸法、瞑想などについて紹介されていますが、著者が心理セラピーの専門家ではないためか、やや記述が薄い印象です。トラウマや感情の抑圧については明確な言及はありません。

専門の整体院にも、心理面との関係を指摘しているところがあります。

私がとった心理面のアプローチ、トラウマ解放のための方法とは?

私が副腎疲労症候群の根本原因としてトラウマを疑ったきっかけは、通っているフィシオエナジェティックの整体院で「身体から、トラウマがあるという反応が出ている」と言われたことでした(フィシオエナジェティックではそういうこともわかってしまうそうです。不思議なのですが。身体は嘘をつかない、ということなのでしょうか)。若干の心当たりはあったものの、トラウマになるほどのひどい経験ではないと思っていたのでびっくりしました。

施術家さんに提案されたバッチフラワーレメディという民間療法を何カ月かやってみたのですが私にはあまり効果が感じられず、トラウマや感情の抑圧を専門に扱っている心理セラピストを探し、通ってみることにしました。

通ってみると、なかなか良くならなかった全身の激しい疲労感・倦怠感や、不眠症状などが不思議なほど良くなっていきました。そして出るわ出るわ、過去のさまざまな未完了の感情やトラウマ…。幼少期に家庭で経験した出来事などは、それが当たり前、みんなも同じようなものだろう、とつい思ってしまうのですが、人に話してみると、自身が幼少期に置かれていた環境がいかに過酷だったかに初めて気がついたりします。どうやら、幼少期からのあらゆる体験からトラウマや未完了の感情が蓄積し、それらに基づいて培われてしまった行動パターン、思考のクセのようなものが身体に悪さをしていたようです。

私が受けている心理セラピーは、トラウマ療法のうちの一つ「ソマティック・エクスペリエンス」という手法です。ソマティック・エクスペリエンスとは、トラウマは個々の出来事の問題ではなく、それらの出来事に対して神経系がいかに反応するかの問題であると考えます。人間の身体面や原始的な爬虫類脳部分にアプローチし、エネルギーを解放することでトラウマの解放を促します。古い記憶を掘り起こして感情的な痛みを再体験するようなことをせずとも、トラウマを解放できるところがポイントです。

sejapan.org

トラウマ療法としては、EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)という手法も効果を上げ、NHKで取り上げられるなど、注目されているようです。 www.nhk.or.jp

トラウマそのものではなく、問題となっている行動パターンや思考のクセに注目し改善するという手法もあり、認知行動療法NLP(Neuro Linguistic Programing : 神経言語プログラミング)が実績を上げているようです。特に認知行動療法は、アメリカでは確立された治療方法として広く認識されているようです。 cbt.ncnp.go.jp

www.nlpjapan.org

その他、近年話題のマインドフルネスも、自身の身体感覚や思考への気づき(アウェアネス)を高めるという点で、非常に有効と思われます。

さまざまな心理セラピーの手法がありますが、手法の合う合わないがありますし、セラピストとの相性やセラピストの力量の問題などもありますので、こればっかりは試しに受けてみて合うものを選ぶしかないかと思います。また、これらのセラピーは、基本的に保険が効かないですし、心療内科メンタルクリニックで受けられないケースも多いです(認知行動療法NLPは、病院でやっている場合がありますが)。個人で開業しているセラピストのところへ行かざるを得ないケースが多く、セラピストの力量もピンキリで、良いセラピストを探すのが非常に大変なのが悩みどころです。

心理セラピーを始めるべきタイミングは?

川本治療所の「心理カウンセリングより体の改善が先である」にあるとおり、まずは体内環境やホルモンバランスの改善を先に行うことをおすすめします。私の経験上も、はじめに食事制限やカンジダ菌除去などによる腸内環境の改善、副腎のケアなどを行い、体内環境がある程度改善してきたタイミングで心理セラピーを受けたことが、症状の大きな改善につながったと思います。

もしあなたに以下のような傾向がある場合、トラウマ療法を検討してみてはいかがでしょうか?(私は残念ながらすべて当てはまります…)幼少期からのあらゆる体験から培われてしまったこういった「認知のクセ・思考のクセ」が副腎を弱らせ、全身の身体症状につながっているかもしれません。

  • いつも自分を犠牲にして他人を優先してしまう
  • 何かトラブルがあると、自分が悪かったんだと思い、自分を責めてしまう
  • 将来のことばかり考えて不安になることが多い
  • 他人の顔色をいつもうかがってしまう
  • 自分に自信が持てない
  • 兄弟や親族にも、自己免疫性疾患や精神疾患で苦しんでいる人がいる

トラウマと身体症状について知るための5冊

最後に、トラウマ、心、身体症状の関係を知るためのおすすめ本を紹介します。

身体が「ノー」と言うとき―抑圧された感情の代価

身体が「ノー」と言うとき―抑圧された感情の代価

自己免疫性疾患やアルツハイマー病、ガンなどあらゆる疾患の根本に、抑圧された感情が深く関わっていることを具体的な症例や研究成果をもとに紹介している本です。幼い頃から感情表現(特に怒りの感情)を抑えつけられていると病気になるリスクが高まる、自律性・主導権を握っているほど健康状態は良好であるなど、興味深い内容が語られています。また、トラウマの影響は世代を超えて連鎖する、という指摘も無視できない点です。

明記されてはいないものの、以下のように副腎疲労症候群につながるような記述があります。

  • ストレスの生理的影響は三種類の器官に働く。内分泌系では副腎。免疫系では脾臓、胸腺、リンパ節。消化器系では腸の内壁
  • 視床下部ー下垂体ー副腎の軸が、多くの慢性疾患に関係している
  • 長期的に過剰な刺激を受け続けると人体のストレス反応、特にコルチゾールの産生バランスがくずれる→慢性関節リウマチの場合、ストレスに対するコルチゾール反応が正常時より低いため、免疫系の活動が乱れ、過剰な炎症が起こる

心と身体をつなぐトラウマ・セラピー

心と身体をつなぐトラウマ・セラピー

ソマティック・エクスペリエンスの創始者ピーター・リヴァイン博士による、ソマティック・エクスペリエンスの入門書です。

人間の古い脳である爬虫類脳が引き起こす戦う、逃げる、硬直反応の三つの反応のうち、硬直反応こそが人間のトラウマの謎を解明する上で最も大切な要素と考え、硬直反応のあとに残った未放出のエネルギーが放出されないとトラウマになると考えます。背景には、なぜ動物はトラウマで苦しまないのに人間は苦しむのか、という点があります。狩猟採集時代には有効だった身体の硬直反応が、文明社会では逆に健康を損ねる方向に働いてしまっていると言えるかもしれません。

  • 日常的な出来事が、虐待と同レベルの苦しいトラウマ後遺症を作り出すことがある。トラウマの影響は、何年も何十年も潜伏しながら進行することもある。そしてストレスや別の事件が引き金になって突然表面化する
  • 健全な攻撃性を回復することは、トラウマからの回復に非常に重要な役割を持つ
  • トラウマは身体の健康にも影響する。慢性的な首や背中の痛み、慢性疲労症候群ぜんそく、消化器系の問題、頭痛など多くの心身症状を引き起こす

など、興味深い点が多く述べられています。トラウマについて新たな視点を与えてくれる一冊です。

GO WILD 野生の体を取り戻せ!  科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス

GO WILD 野生の体を取り戻せ! 科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス

人類は文明を大きく進化させてきたけれど、その身体は狩猟採集時代からほとんど変わっていない。現代の病気のほとんどが、農業と定住生活がもたらした文明病である。したがって、狩猟採集時代の身体に合った食事や行動をとれば心身ともに健康になれる、と主張している本です。

  • 迷走神経は自律神経とかなりの部分重なっている。戦闘準備態勢を整えて解除する役割を担うが、解除するには解除するためのシグナル一式が必要になる。長く虐待されたり脅されたりしてきた人、とりわけ子どもは、解除スイッチが壊れたままになり、平常の状態に戻れず、恐怖の中でずっと生きることになる
  • 現代の身体疾患の多くは、迷走神経と腸神経系が関わる領域で起きている。瞑想神経のブレーキは呼吸によって調整することができる。呼吸は、瞑想神経のブレーキの故障による健康上の問題を調節する道具になる
  • 体の不調や病気を、ただ一つのシステムの故障として修理しようとしてもうまくいかない。原因となっている過負荷は、体の他の部分で起きている可能性がある。トラウマなどの心の問題が消化器系の病気となって表出し、その体の病気を治せば心の病気も改善することがある
  • トラウマとは、恐れゆえに動けなくなる。みんなとともにリズミカルに動く、呼吸を整える、声の振動を感じるなどがトラウマへの対処に良い

など、ソマティック・エクスペリエンスの考え方にも通ずるような、トラウマに関する言及があります。他にも、食事について小麦や糖分を摂らないなど副腎疲労症候群への対処法とほぼ同じことが書かれていたり、マインドフルネスの重要性も指摘されており、副腎疲労症候群に悩む方にとって一読の価値があると思います。

感情地図 ―心と身体を元気にする最高の方法

感情地図 ―心と身体を元気にする最高の方法

  • 作者: キャロルライトバーガー,鎌田裕子
  • 出版社/メーカー: ビジネス社
  • 発売日: 2008/12/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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人格行動心理学、行動医学を専門とする直観医療者による本。魂、心、身体は密接に関わっており、病気や身体の不調は、抑圧された感情や恐れのエネルギーが各器官に蓄積されることによって生み出されると主張します。

特に注目すべき章は「11 感情地図で見る隠れた身体の調子」と「12 よくある病気とその裏にある意味」です。筆者の15年間以上にわたる研究や患者との関わりをふまえ、どんな感情や態度がどの器官に悪影響を及ぼすか、また病気や症状にどんな心理や感情が関わっているかが示されています。

たとえば、副腎疲労症候群と併発することが多いカンジダ症については以下のような記述があります(一部抜粋)。

  • 人間関係、特に母親との間にある感情的苦痛を反映しています。支持を得られない、認めてもらえない、愛されていないと感じ、自分の気質についてひねくれた考えを持ちます。
  • 付随した感情:悲嘆、悲しみ、悲哀、憎悪、放棄に対する恐れ
  • 隠された欲求:身体ー人と結びつき、愛されていると実感する

心当たり、ありませんか?私はもろに当てはまっていました…。若干スピリチュアルな雰囲気のある本ではありますが、さまざまな発見があり、おすすめです。

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

大変話題になった、お馴染みのアドラー心理学に関する本です。アドラー心理学はトラウマを明確に否します。私はその考え方に否定的ですが、アドラー心理学の「課題の分離」の話や承認欲求を否定する話など、自身の心理面をまた違った観点から眺められるという点で、読んでおいても良いと思います。